読書の秋にブックオーナーがお薦めする3冊
読書の秋にブックオーナーがお薦めする3冊!の展示がはじまりました。
アソートボックスからはこちらの3冊を。
ローワンシリーズは、臆病で弱虫な主人公・ローワンの冒険話。
でも冒険といっても、暮らしている村の川の水が枯れてきて、理由を探しに源流の山へ向かう、といった冒険。
つい先日、ピレネー山脈の特番をみていたら、ローワンはこんな山に向かっていったんじゃないかなーって。
ちょっとしたことでも、誰かにとっては大冒険。
ちょっとやそっとじゃ、人って簡単に変われないし、強くなれないもんです。
泣きながらでも、進んでいくんです。
主人公だけでなく、一緒に旅をする仲間も、みんなコンプレックスを抱えている。
そういう登場人物の姿が、こどもだけでなく、大人にも突き刺さる良作です。
(当時、同時期に流行したのがハリーポッターでした。私はローワン派w)
学生時代に教科書で読んだきり、と私もそのひとり。
井伏鱒二さんの著書を新たに読むのはこの本が初めてでした。
「珍品堂主人」は骨董品を扱う主人公。骨董品で思い出すのは、夏にでかけた京都・大山崎のサントリー工房の近くある「時代屋」という骨董品屋さん。
映画『時代屋の女房』が元で流行った店名だとかなんとか。そのお店の店主も、夏目雅子さんのような女性がふらりと現れてくれることを待ってたのかなぁと想像すると、おっちゃん、楽しんでるなぁ。なんだかチャーミングに思えてくるものです。
珍品堂の主人にも、骨董と女性がつきもの。好きならやらずにはいられない、そんな性分もチャーミングな主人公です。おっちゃんやけど。
帯と、巻末のエッセイを書いているのが、白洲正子さんというのも興味をそそります。
井伏鱒二さんの作風を覚えるなら、コントでいうたら「ラーメンズ」
音楽でいったら「ボブ・ディラン」と覚えてはいかがでしょうか。ほんとかうそか。
風が吹いていないのに、吹かされているような・・・その答えは風の中。
誰もが経験するし、何度も訪れる岐路で、立ちかえって読みたくなる本です。
男女の過去の傷を慰め合うお話ではなく、過去の傷を抱えたままでも折り合いをつけて
前(未来)をみて進んでいくお話です。
手紙のやりとりで物語が進む書簡体で、日本語が綺麗な宮本輝さんの作品の中でも魅力的な作品です。
錦繍は、紅葉が華やいで燃えるような風景を思い浮かべる言葉です。
人としても華やいで燃えるような時があって、冬枯れて、また春を迎える、
そういう回生の営みを表す作品です。
3冊を選んでみて、
臆病で弱くて、コンプレックスを抱えた自分も
しょうがないなぁ、こいつ、と思われる自分も
傷だらけで、消せない過去を抱えた自分も
全部ひっくるめて、大丈夫、と安らぎを感じる本ばかりです。
人生の添え木として、立ち止まったときに読んでみたい本が揃いました。
秋にかぎらずオススメです。